水頭症外来

①特発性正常圧水頭症(iNPH)について

 特発性正常圧水頭症(iNPH: idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus)は、脳の中にある脳脊髄液がうまく循環せず、脳室がゆっくりと拡大し、脳が圧迫される病気です。主に高齢の方にみられ、以下の3つの症状(図)が特徴です。

  • 歩きにくい(小刻み歩行、すり足、転びやすい)
  • もの忘れ(意欲の低下・認知機能の低下)
  • 尿が近い・失禁してしまう

 これらの症状は、年を取ると誰しもが大なり小なり経験することです。また水頭症によるこれらの症状は緩徐に進行するため、年のせいと考えてあえて病院を受診しないと事もしばしばあります。iNPHは疫学調査で65歳以上の1-3%程度にみられる比較的頻度の高い疾患と考えられており、実はiNPHの大多数の方は病院の受診に至らず正しく診断されていないことが多いと言われています。しかし、iNPHは適切な治療により改善が期待できる病気であり、上記の3つの症状がいずれか一つでもある場合は、脳の検査を受けて病気を発見する事がまず何よりも大切です。決して稀ではない疾患のため、身近な方の中にもiNPHの方が潜んでいる可能性があります。

当院のiNPHの検査について

 まず正常圧水頭症外来を受診して頂き、問診や頭部MRI検査を行わせて頂きます。その上でiNPHが疑われる場合は入院での詳しい検査をお勧めしています。
 当院では、iNPHの正確な診断と適切な治療方針決定のために、原則として1週間程度の検査入院をお願いしています。 入院中には以下の検査を実施します。

  • 画像検査(CT・MRI・SPECT) 脳・脊髄/脊椎・全身の形態評価、脳の機能評価目的
  • 脳脊髄液検査(タップテスト)髄液排除による効果確認、アミロイドβやリン酸化タウなどの髄液中マーカー測定)
  • 歩行機能検査・認知機能検査

 特にタップテストでは、脳脊髄液を30ml程度抜く事で一時的にiNPHの症状が緩和することがあります。これによって一時的にiNPHの症状が緩和することがあり、後述するシャント術の治療効果を予測することができます。注意すべきなのは、タップテストの効果がなかった場合でもシャント術を行えば症状改善がある方が一定数存在している事です。タップテストの結果のみで治療方針の決定は行わず、すべての検査を総合的に検討して治療方針を決定しています。

 また当院では、単にiNPHの診断にとどまらず、歩行障害や認知機能障害の原因となる他の疾患の併存の有無を必ず確認しています。具体的には、脊髄疾患(頚椎症・腰部脊柱管狭窄症など)やアルツハイマー病・パーキンソン病などの神経変性疾患といった比較的頻度が高い疾患を確認しています。症状の原因となりうる他の疾患の合併についても総合的に評価し、患者さん一人ひとりに最適な治療方針を検討します。

 合併する疾患に対しても当院の脊髄・脊椎の専門医や脳神経内科専門医と連携して治療が可能です。

当院のiNPHの治療について

 iNPHの治療は、シャント術と呼ばれる手術が中心となります。 これは、脳内にたまった髄液を腹腔へ逃がすことで、症状の改善を図る治療です。当院で行うシャント術には主に以下の2種類があります。

VPシャント(脳室-腹腔シャント)
LPシャント(腰椎-腹腔シャント)

 いずれも全身麻酔の手術で、手術時間は1時間~1時間半程度です。当院では身体への負担が比較的少ないLPシャントを第一選択としています。一方で、頚椎や腰椎に変性がある場合などには、VPシャントを選択するなど柔軟に対応しています。 手術時は状況に応じて10-15日程度の入院が必要となります。

術後について

 術後はシャント手術時に埋め込んだ流量調節の機械であるシャントバルブを調整し、患者様それぞれにあった適切なシャント流量を決めていきます。シャントバルブの調整は体外から専用の磁石を当てて行い、数分で終了します。当院では術直後の入院時は少なめのシャント流量で開始し、外来で徐々に流量を上げていく方針を取っています。

 退院後は1か月後を目途に外来を受診して頂き、以後術後早期の段階では3か月から6か月の間隔での外来通院をお願いしています。状態が落ち着いた方でも6か月から1年に1回は定期受診をお願いしており、体内に留置したシャントシステムの不具合がないかを確認させて頂いております。

 iNPHの患者様が一人でも多く適切な診断・治療を受けられるように、この外来を窓口に取り組んで行きます。少しでも水頭症の症状が疑われる点がございましたら、どうぞ遠慮なく当院を受診なさって下さい。予約なしでも受診は可能ですが、できれば事前に当院外来まで電話にて御連絡頂き、予約を取って頂けますと幸いです。

受付時間金曜日 13:00-17:00

担当 石田 裕樹